愛の渇き
もう一冊三島作品を読もうと本屋さんで決めて読んだのがこれ。「愛の渇き」。冒頭で大阪の中心街、梅田の阪急百貨店から話が始まるのに魅かれ、選びました。大阪は僕自身がかつて住んでいたところで、読んでいてその情景が眼に浮かびやすいのと、自分の知っている土地が小説になっているので、とても読みたくなったのです。それにしてもこれは「仮面の告白」の女性版といったら良いのでしょうか。主人公の悦子は、かつて夫の浮気に悩まされていたが、夫が腸チフスにかかると、執拗なまでの看護と、かつての嫉妬心が絡み合い、夫が苦しみながら死んでいく様を自分の幸福と結びつけ、看取っていく...。夫が死んでからは、夫の父の家に身を寄せるが、愛してもいないのに夫の父と関係を持ち、一方でその家の使用人三郎をひそかに愛するようになる...。三郎は同じ使用人の美代を妊娠させてしまうのだが...。もうかなり陰湿な悦子の妄想と精神的錯乱が、とつとつと描かれていき....そして...。いや女性は怖いなぁ。それに田舎の近所付き合いは、本当にいやだなぁ。三島作品にしては、話が綺麗にまとまりすぎているきらいはありますが、これは一級のエンターテイメント作品だと思います。面白かった。新潮文庫。400円。
ラベル: BOOK
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