悪戦苦闘
先月の30日に華々しく六本木にOPENした東京ミッドタウン。
2000年に防衛庁本庁が市ヶ谷へ移転したことから、この跡地に巨大な高層ビル、ホテル、ショッピングセンターなどなど、またまたバブリーなスポットが誕生しました。六本木ヒルズに負けず劣らず、その規模は凄かったです。何よりも、あのライフルを脇に抱えた門番の姿が印象的だった防衛庁は影も形も消え失せ、このような商業施設に化けたのですから驚きです。
でも今回の何よりの目的は、安藤忠雄氏が設計を手がけた21_21 DESIGN SIGHTというデザインミュージアムを見に行く事です。まだOPENしたてなので混んでいるだろうから、もう少し日が経ってから行こうと思っていたのですが、我慢出来ませんでした...。
ここ21_21DESIGN SIGHTは、デザインについて考える場所であり、ものづくりの現場であり、デザイナーをはじめ、企業、職人やエンジニア、一般ユーザーといったデザインを取り巻くあらゆる人々と意見を交換し、デザインへの関心と理解をムーブメントとして育てていくことを目指す場所だとか。きっかけは88年に、ニューヨークでのイサム・ノグチの個展会場にて、三宅一生、イサム・ノグチ、安藤忠雄の三氏が、そのような場所を日本に作りたいと思った事が原点だそうです。それから実に18年。メンバーは、深澤直人、佐藤卓、安藤忠雄、三宅一生となり、ここ六本木に誕生したわけです。
そして第一弾の展示は、「安藤忠雄 2006年の現場 悪戦苦闘」です。これは、この建物の完成直後を公開することにより、建築空間そのものを体験するという試みで、建築模型・写真・忠雄直筆のドローイングなどが展示されており、完成までのプロセスを紹介してくれます。いや、これがまた凄かった。昨年からの耐震偽装問題に始まり、建築業界に限らずですが、今いろいろな分野で“信頼”が失われつつあります。このぐらいならいいだろうという行為が、企業単位にまでその体質が染み込み、当たり前の感覚に陥ってしまっている。そんな事が、世の中にはごまんとあり、いろいろなところで吹き出してきているでしょうか...。
安藤氏は、そんな建築業界の“信頼”を少しでも回復すべく、あえて今回“現場”を公開しようと思い立ったそうです。悪戦苦闘というタイトルは、まさにそのものズバリのタイトルです。決して苦言を呈しているわけではなく、モノ作りの本質とはそういうものであるという事です。
三角形の屋根が特徴な建物内は、まさに安藤氏らしく、コンクリートとガラスをうまく調和させ、自然の光を取り込むといった、おなじみの安藤流な美しい建物です。半地下状態で建物が出来ているので、外見からは想像出来ないほど中は広いです。展示場では、この建物の悪戦苦闘ぶりを伝える、図面や模型、ドローイングや実物の鉄筋まで展示されております。建物を作るという現場の人達の熱い何かが、生々しく伝わってきます。建築学生に限らず、これはもう、モノ作りに関わる人全てが見なければならない展示ではないでしょうか。とても感動いたしました。同時に出版された本“悪戦苦闘”も販売されておりました。ここで購入すれば、安藤氏のサイン入りで買えますよ。
ミッドタウンのショッピングモールの方は、人がたくさんいて賑わっていましたが、意外にこちらの方は人が来てないように感じました。こんなに人が来ているのに...。やはり物欲先行なのか、全くこのようなモノに興味がないのか。その辺りのバランスが、現在の日本国民の体質を表しているようにも感じます。少し複雑な思いを抱きました。展示は4/18まで。必見。
ラベル: リポート
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